失敗とは、川の流れのようなものだ。時には穏やかで、時には激しく、僕たちを押し流してしまう。でも、その流れに逆らわず、ただ漂うだけでは、見えざる糸は決して紡がれない。ウェブカメラの向こう側で誰かと繋がろうとする時、失敗は避けられない一歩だ。僕もかつて、その川に何度も溺れそうになった。
初めての失敗を覚えている。画面越しに笑顔を振りまく彼女に、ただ「可愛いね」と繰り返したあの夜。言葉が空回りして、彼女の微笑みが少しずつ冷たくなっていくのがわかった。焦れば焦るほど、会話はぎこちなくなり、最後には「またね」と言われて終わった。あの時、僕は川底に沈んだ気分だった。でも、そこから見えたものがあった。相手をただ見るだけでなく、感じることの大切さだ。
次に失敗したのは、準備を怠った時だ。彼女が好きな音楽の話を振ってきたのに、僕はそれを知らず、適当に相槌を打った。すぐにバレて、「あ、興味ないんだね」と一蹴された。画面が暗転した後、僕は自分の浅はかさを呪ったよ。でも、その痛みがあったから、次はちゃんと相手のプロフィールを読んで、彼女が好きそうな話題を用意した。失敗は、川の石のようなものだ。踏み外せば痛いけど、それを渡れば向こう岸に近づける。
大事なのは、失敗を悔やむだけじゃなく、そこから何を拾うかだ。例えば、会話が途切れた時、無理に埋めようとせず、静寂を共有してみるのもいい。彼女が何かを話したい瞬間を待つんだ。焦って言葉を重ねるより、その一瞬の間が、二人の距離を縮めることもある。ウェブカメラ越しだって、心が通う瞬間はあるんだよ。失敗は、そのタイミングを見極める目を育ててくれる。
そして、もう一つ。画面越しだからって、自分を飾りすぎないこと。僕はかつて、カッコつけて嘘をついたことがあった。彼女に「旅行好きだよ」と言いながら、実際は家から出ないタイプだった。後でボロが出て、気まずい空気が流れたよ。失敗から学んだのは、自分らしさを少し見せる勇気だ。完璧じゃなくていい。川の流れに身を任せるように、自然体でいれば、相手も自然と近づいてくる。
失敗の川は冷たいけど、渡りきれば暖かい糸が手に入る。その糸は、見えないけれど確かにそこにある。君が今、川の中で足を滑らせても、大丈夫だ。流れに抗わず、ただ次の一歩を踏み出してみて。失敗は終わりじゃない。むしろ、始まりなんだ。