街角の雑踏に紛れて、君の姿を目で追った。あの日の風は少し冷たくて、僕の手はポケットの中で震えてたよ。笑顔が遠ざかる瞬間って、時間がゆっくり流れるよね。まるで禅の瞑想みたいに、心が静かになって、でもどこか寂しい。
ナンパなんて普段しないんだけど、君の傘が風に煽られて飛ばされた時、思わず駆け寄って拾ってしまった。自然に言葉が出てきて、「これ、落としましたよ」って渡したら、君が小さく「ありがとう」って呟いた。あの声が頭から離れないんだ。柔らかくて、でもちょっと儚い感じがして。
その後、少しだけ話したよね。駅までの道すがら、カフェの看板見て「コーヒー好きですか?」って聞いたら、君は首を振って「紅茶派なんです」って笑った。そこから何か始まる気がしたのに、電車が来てしまって、君は手を振って去ってった。僕はその場に立ち尽くしてたよ。風がまた吹いてきて、心の中がシーンと静まり返った。
禅ってさ、執着を手放すことだっていうけど、こんな刹那的な出会いでも執着しちゃうんだなって気づいた。失敗談っちゃ失敗談だけど、君の笑顔が遠ざかる姿が頭に焼き付いてて、なんかそれだけで十分だった気もする。ナンパ成功とか失敗とか、そんな次元じゃないんだよね。心が揺れた瞬間が大事でさ。
またどこかで会えたら、今度はちゃんと「紅茶でもどうですか?」って誘えるかな。いや、やっぱりダメかな。笑っちゃうくらい、僕って不器用だよな(^^;) でもあの日の君の笑顔、忘れられないよ。街角で一瞬交わした視線が、僕の心にずっと響いてる。